2007年12月30日

恥づる 13:大林との会話

大林は、ゆっくりと研究室に近づいて来ると見ていたレポートから目を離し、研究室の前にいた柴崎に気付いたように目をやった。
「おや、清掃員さんですか、どうしました?私に御用ですか?」
大林は柴崎が扉の前にいることを不思議そうに尋ねてきた。
「いえ、私はこの大学の清掃に来たのが初めてで、仕事ぶりなどを上司がどう見るのかが心配でして、どんな細かいところも丁寧に清掃しておいたほうがいいかと思ったんです。ですから、隣の山崎先生の研究室の扉から順番に拭いていたんですよ。」
柴崎はとっさに隣の研究室のプレートに目をやり落ち着きを払いながら質問に答えた。
そして間髪入れずに、
「そうだ、もしよかったら先生の研究室の中も掃除しますよ。いかがでしょう?」
と聞き返した。
「それは、ご丁寧にありがとうございます。私の部屋は研究の資料で散らかりすぎていて確かに大変なんですよ。ですが、今はこれから研究の資料を作成しなければいけないので結構です。また、機会がありましたらよろしくお願いしますね。」
とっさに聞かれたせいか、柴崎の行動に疑いも持たず大林は丁寧に答えてきた。
「そうですか、では、また必要になりましたら、いつでも声をかけてください。」
(失礼しました、どうぞ)という素振りをしながら柴崎は扉の前からゆっくり離れた。もちろん、鍵穴の粘土を雑巾の下で静かに引き抜きながら…
posted by 志波純一 at 02:21| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (13) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月27日

恥づる 12:大林接近

この棟には、大林の研究室があった。棟の真ん中にエレベーターがあり、その左右に教授たちの研究室がある。大林の研究室は8階の奥から二番目に位置していた。柴崎は「大林智樹」というプレートを確認すると、清掃しながら注意ぶかく廊下を見渡した。この大学伝統があり、名門と言われているが、校舎は古めかしく防犯カメラのようなセキュリティー対策は十分ではない。
辺りに人の気配がないことを確認すると、柴崎は静かに大林の研究室のドアノブを回した、が、案の定、鍵がかかっていた。
彼は一度腰に手を置き、そうっとポケットに手を突っ込んだ。中から粘土のようなものを取り出し、慌てずに鍵穴に押し当てた。しばらくすると鍵穴の通りに固まってくれる優れものである。彼はこれをハングとして裏サイトの取引で入手したのだ。
その時だ。カツ、カツ、エレベーターから誰かが降りてきた。まだ、粘土が十分に固まっていない。柴崎は動揺を見せまいと、ドアノブに手を置いたまま、ゆっくり廊下の方に目をやった。
歩いてくるのは、まぎれもなく大林だった。
カツ、カツ…
彼はレポートに目をやりながら、まっすぐ研究室に向かってきている。まだ、柴崎の行動に気づいてはいないようだった。
柴崎は、音を立てずに一度だけ唾を飲み込んだ。

http://p-netbanking.jp/blog/in.php?blog_id=3466
posted by 志波純一 at 16:50| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (12) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恥づる 11:研究室へ

柴崎が清掃員の山田として自己紹介を済ませると仕事の分担が待っていた。芦沢は今日の清掃場所を説明すると、ちゃんと清掃のやり方を聞いていろよ、と言わんばかりの顔つきで柴崎を見た。
「わかります。俺はB棟をやってみたですが、いいですか?」
柴崎は自ら清掃場所を指定した。芦沢は、やる気あるじゃねえか、若いの!といった素振りですぐさま、右手の親指を立てOKを出した。
「よし、じゃあ、さっそく仕事だ。教授の先生方様や学生様の邪魔にならないようにやれよ。」
普段、上から物を言う大学教授たちや態度のでかい学生に当てつけるかのようにへりくだった物言いだった。
清掃員はそれぞれの担当場所に散っていった。柴崎はゆっくりと準備した。「おい!早くしろ!」芦沢の声が響いた。
はいはい!と返事をするかのように帽子の先を摘みながら柴崎はB棟へ向かっていった。
 
http://p-netbanking.jp/blog/in.php?blog_id=3466
タグ:研究室
posted by 志波純一 at 16:48| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (11) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恥づる 10:清掃員

柴崎はドキッとしたが、その表情を見せまいと唾を一度飲み込みながらゆっくり後ろを振り向いた。
そこに立っていたのは、柴崎と同じ服装をした初老の男だった。
「あんたが今日、清掃の手伝いをしてくれるバイトの兄ちゃんか?」
男は柴崎の身体を頭から足元まで目を細めながら眺めるように話しかけてきた。
「あっ、はいそうです。山田です。よろしくお願いします」
柴崎は「山田俊一」という名でバイトの清掃員として今日の仕事を契約していた。
初老の男は名前を「芦沢」といった。小柄で白髪のいかにも年をとっている風体だが、気持ちは職人気質を感じさせるはっきりした物言いをする男だった。
「おい、じゃあ早速、仕事の準備をするぞ、他にも仲間がいるから、こっちにこい!」
芦沢は大学校内に入る鍵を開けた。
「兄ちゃん、年はいくつだ?」
「28歳です」
「おや!28歳にもなってまだ、バイトか?ちゃんと働かねえと親が泣くぞ」
お年寄りらしい説教めいた会話をしながら、二人は校内奥の清掃員用の部屋に向かっていった。部屋に入るとすでに他の清掃員が2、3人準備していた。
「みんなに紹介する、今日、バイトで入ってくれる、えー、えーっと…」
「山田です…よろしくお願いします」
おぼつかない芦沢の紹介に小さい声で答え、柴崎はペコリと軽く頭を下げた。
タグ:清掃員
posted by 志波純一 at 16:43| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (10) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恥づる 9:大学

白み始めた朝焼けを背に、柴崎は白い息を吐きながら自転車を飛ばした。冬の寒気が肌身に凍みたが、彼の心の中はむしろ熱かった。「吊るしてください…」その文字から伝わる悲痛な叫びが彼を徐々にハングの顔に変えていった。
 着いた場所は京帝大学だった。門の前に自転車を止め、乱れた息を整えると担いでいたバッグを押さえながらゆっくりと降りた。早朝ということもあり、周囲には誰も見当たらない。彼は自転車をゆっくり押しながら辺りを確認して大学構内へ足を踏み入れた。学生のタバコの吸殻があちこちに落ちている。そんな物静かな構内の自転車置き場に自転車を置くと、建物の影にしゃがみ込み何かをバッグから引きだした。柴崎がバックから引き出したのは清掃員の服だった。彼はその場ですばやく着替えると、清掃員の格好で構内を見て回り何かを調べ始めた。
調べ始めて数十分ほど経ったころ、突然、
「おい、兄ちゃん!」
後ろから誰かが声をかけた。
posted by 志波純一 at 16:32| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (9) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恥づる 8:ターゲット情報

彼はここ数日の中で集めた情報と彼女のメッセージを見比べながら,胸の中にふつふつと湧き上がる怒りに似た気持ちを抑えきれなくなっていた。
「必ず俺が吊ってやる…」
黒縁メガネの中央を右手の中指で押し上げながら吐き捨てるように呟いた。目の奥は凍てつく氷のようだ。ハングとしての気持ちが彼をより一層冷徹にしているかのようだった。そして調べ上げた情報の入っている電子手帳を再度念入りに確認した。
「京帝大学教育学部教授 大林智樹 51歳 社会科教育法が専門 家族は妻と二人の息子,祖母と同居の5人家族 出身地は長野県長野市…」
ターゲットの情報が細かく入力されていた。画面を変えると更に細かい情報が入っていた。
「温厚な性格で人と争うことがなく,順調に教授に昇りつめた。周りの人望も厚く部下からの信頼もある。家族を大事にし,愛妻家としても有名。研究者としての能力も高く,大学内でも有望な人材として今後の活躍も期待される…」
この偽善者め,お前の化けの皮は俺が剥がしてやる。
反吐が出るほどの気持ちを抑え,ハングは電子手帳をパタリと閉じた。
そして,シートの下に置いてあるバックを肩に掛け,物音も立てずに自室を抜け出し,足早にカフェの外へと出ていった。外はすでに,うっすら明るくなり始めていた。
タグ:ターゲット
posted by 志波純一 at 16:27| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (8) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恥づる 7:hitorishizuka


「吊るしてください」と書き込むと復讐される…そんな闇の掲示板があるという噂が広まってから数ヶ月,警視庁のサイバー犯罪対策を担当する名うての刑事たちでも,なかなかその存在を確認できないでいた。そんな警察の捜査を尻目に,今日も掲示板には書き込みが行われていた。
「お願いです。もう,とても苦しくて,こんな屈辱許すことなんてできません。だからといって公にする勇気も私にはありません。お願いします。やつを吊るしてください。お願いします」
書き込みは,「hitorishizuka」というハンドルネームの女性からのものだった。hitorishizukaは漢字で「一人静」と書き,別名をヨシノシズカともいう植物である。山地のほの暗い林に生える草丈15〜30cmの宿根草で、春の穏やかな日光夏の日陰を好む花である。葉に囲まれた花穂が一つあることから一人と見立てられ、花の清楚さを源義経の妻,静御前にたとえたことからこの名前がついたとされている。
柴崎は,薄明るいネットカフェの自室で,その掲示板をじっと見詰めていた。時計はすで新しい日を刻み、夜もかなり更けていた。
「この花の名前の通り彼女は清楚な女性なのだろうか」彼は,両手を顔の前で握りながらそんなことを想像していた。彼女のメッセージには「お願いします」という言葉を三度も繰り返されるほど強い思いがあふれていた。
posted by 志波純一 at 16:25| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (7) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恥づる 6:サイバー犯罪対策

「やれやれ,やりきれねえな」
主任の猪瀬は机の下を軽く蹴り上げ声を荒げて言った。猪瀬はもともと組織犯罪対策を手がけていた,いわゆる暴力団相手の武闘派の刑事だった。しかし,二年前,暴力団組織への捜査中に銃で撃たれ走ることができない身体になってしまっていた。その後,この部署に配属された。彼の本意ではない仕事であることもあり,そのイライラは限界に達していた。
「まあまあ,猪瀬さん,ゆっくり探しましょうよ。慌てても仕方ないですよ,この手の仕事は特に根気が必要なんですから」
後輩の井上が隣の席から猪瀬を嗜(たしな)めた。
「わかってるよ!だがな,最近,社会にはびこる悪党退治かなにか知らんが,正義感ぶったやつが,会社や個人の極秘の情報を暴いてリークし社会的制裁を加えてやがる。それで善人ぶってるとしたら大間違いだ。俺はそんな訳のわからん正義感に虫唾が走るんだよ」
「そうですかね。自殺や殺人することを助長するよりよっぽどいいんじゃないすかね?」
「ばかやろう!」
猪瀬は井上の頭を軽く小突き言い放った。
「だったら堂々と暴きゃいいんだよ。コソコソとハイエナみたいに,いいとこ取りするような,そんな態度が気にいらねえ」武闘派として鳴らした猪瀬らしい答えだった。
「そりゃそうかもしれないですけど…だいたい闇の掲示板『吊るし屋』なんてサイト,本当にあるんですかね。これだけ探してもなかなか見つからないんですよ。たんなる噂じゃないすか?」
「ばかやろう!それを探すのが俺たちの仕事だろうが」
無気力気味の井上の頭をさっきよりも強く小突き,猪瀬は再びパソコンに向かった。
タグ:刑事 警視庁
posted by 志波純一 at 16:16| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (6) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恥づる 5:闇の掲示板

世間に妙な噂が広がり始めたその頃,柴崎はネットカフェの自室にこもりパソコンに向かって何かを黙々と調べていた。クリスマス間近の繁華街は,若者の楽しげな声や忘年会で酔っぱらったオヤジたちの声がこだましている。そんな賑やかな雰囲気とは対照的に彼の一室は,ネットカフェの一番奥に位置しオレンジ色の電球の明かりが一箇所から斜めに注ぎ込んでいる。室内はパソコンのモニターだけが静かに光っている。
カタカタカタカタ,キーボードを打つ音が小さく響き,柴崎は,ふぅっと一息吐いた。
「見つけた…」ささやくような声でつぶやくと調べた情報をすばやく自身の電子手帳に移した。彼が調べたのは,とある有名私立大学だった。
 同じ頃,黒のスーツに身を包んだ複数の男たちがパソコンに向かいある捜査を進めていた。警視庁のサイバー犯罪対策を受け持つ刑事たちである。彼らはインターネットのいわゆる裏サイト・闇サイトを調べており風俗,性犯罪,自殺幇助,殺人依頼など様々な分野から犯罪を未然に防ぐため日々調査を行っている。しかし,それらを取り締まる彼らの顔には明らかに疲労感が漂っていた。この手のサイトは一つのサイトを取り締まっても,その間に似たようなサイトが10は立ち上がると言われている。まさに,いたちごっこなのだ。
posted by 志波純一 at 16:14| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (5) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恥づる 4:吊るしてください

キャリアウーマン風の女は話を続けた。
「実はね…その会社の社長は大金を自分しか知らない金庫の中に隠していたんだって。でもその金庫の中を写した画像がネットで配信されたらしいの…」
「えっ。そうなの?」
友人の女はコートに手を突っ込んだまま,思わず首をすくめた。
「そうなのよ。しかも,最近,耐震構造を偽装した建築会社や食品の賞味期限をごまかしていた会社があったでしょ。それらも極一部の関係者しか知らない情報がネット配信されたり映像が出回ったりして決定的な証拠になって追及されたらしいの」
キャリアウーマン風の女は,どうおもしろい話でしょう,といわんばかりの顔つきで話を続けた。
「なんでも,ある闇サイトで『吊るしてください』とお願いすると,そういう世の中の悪事が暴かれるって噂なのよ」
「はぁ?そんなの嘘に決まってるじゃない。何?吊るしてくださいって?仕事人じゃあるまいし」
ばかばかしいと両手を開き,呆れた顔で友人の女は再び歩き始めた。
「ちょ,ちょっと,待ってよ。でもなんだかワクワクする話じゃない?」
「ないない!噂に決まってるでしょ」
やっぱり?二人はそんな噂話に苦笑いをしながら繁華街のネオンの中に消えていった。
posted by 志波純一 at 15:52| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (4) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恥づる 3:巷の噂

ネット世界で通称:ハングと呼ばれる男が寝泊りしているネットカフェは繁華街の一角にある。深夜まで人通りが途絶えることなく飲み屋や風俗店も多く立ち並んでいる。サラリーマンから茶髪の若者まで幅広い年齢層の人間でごったがえしている。そんな街は今,クリスマスの雰囲気一色に染まり赤や黄色など色とりどりのイルミネーションがネオンと相まって,より一層の賑わいを演出している。
年末のボーナスを片手に電気屋に駆け込む男,短いスカートで吹き荒ぶ寒風の中をキャラキャラと話しながら歩く若い女達。どこの繁華街でもよく見られる光景なのだが,そんな人々の間で秋ごろから「ある噂」が流れ始めていた。
「ねえ,知ってる?この前話したニュースのことなんだけど…」
若いキャリアウーマン風の女性が思い立ったように,隣の友人女性に話しかけた。
「覚えてるわよ。あの会社,売り上げを偽装工作して社長が何億も横領していたんでしょう。あくどい脱税でかなり儲けていて,そのために濡れ衣を着せられた社員が自殺したって話題になったよね」
「でもね,私が問題にしたいのはそのことじゃないのよ。実は,そのことがニュースになったのには『ある理由』があるんだって」
「どんな?」
友人の女は足を止め,目を丸くしながら問い返した。
posted by 志波純一 at 15:50| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (3) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恥づる 2:ハンドルネーム

彼はこのネットカフェでは,柴崎圭吾,28歳と登録していた。しかし,それが本名なのか,本当の年齢かどうかなどということはどうでもよい。わかっているのは,彼がフレームの太い黒縁メガネをかけ,髪は短くボサボサ,猫背で細身の身体つきであり,どうみても屈強な若者には見えないということだ。
そんな彼には,もう一つの名前があった。ネット上の世界ではh,a,n,gを用いている。つまり,ハンドルネームで「hang」=ハングと呼ばれている。
「驚きだ…」ネットのとある画面を見ながらそう呟くと,ハングは違うサイトを開き何かを調べる準備をした。
「さて,仕事に取り掛かるとするか!」
後頭部に両手を当てて一伸びすると,コーラを手にとり一気に飲み干した。
posted by 志波純一 at 15:34| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (2) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恥づる 1:ネットカフェに住む男

「いつもありがとうございます。日額3400円になります」
店員がいつものように定時の清算を求めた。男は黙ったまま茶色の古びた財布から1000円札3枚と500円玉を取り出し店員に手渡した。100円のおつりを受け取るとボアつきのコートに両手を突っ込み,彼専用の部屋へとまっすぐに向かった。部屋に行く途中,飲み物コーナーでコーラを一杯注ぎこんだ。カタン。薄い戸を閉めると部屋の中には着替えの入ったボストンバッグがひとつ置いてあるだけだ。
「ふうー」
大きく息を吐き,一口コーラを飲むと黒いシートの上に寝転んだ。時間はすでに新しい日を刻んでいた。今日の仕事も簡単ではなかった。しかし,10分ほど休むと彼はムクッと身体を起こし,いつものようにパソコンスイッチを入れた。ブィーンというハードディスクの動く音だけがかすかに鳴り,同時に部屋の中はモニターの光で明るくなった。
 彼は,黒縁のメガネの中央を中指で押し上げパソコンに向かった。カタカタとキーボードの音が響き始めた。
「今回は…かなりえげつないなあ…」
頬のヒゲを抜く癖があるのだろう。短いヒゲを一本抜きながら呟いた。
 ネットカフェの一室を借り切り,日々,日雇い派遣の仕事しながら生活を送る彼を世間ではネットカフェ難民とでも呼ぶのだろう。本日の仕事を終えた彼には,もうひとつ行うべき仕事があった。

テクノラティプロフィール
posted by 志波純一 at 15:19| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (1) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする