「ICチップはない形のカードか…旧型のカードなら簡単だ…」
そんな独り言を言いながら、カードの種類を識別した。最近はセキュリティーが強化され、ICチップが搭載されたカードが主流になりつつある。そういう意味では大林の使用しているものは磁気だけの単純な構造だった。カチッ!
そのことだけを確認し、小型カメラのスイッチを切った。カタカタカタ…再びキーボードをすばやく打ち込むと何やらメールを送信した。
「よし、今日の仕事はこれで終わりだ。」顎鬚を一本抜きながらメールが送信されたことを告げるメッセージを閉じた。ふうとため息を一つつき、身体をごろりと横にしてから横目で天井を見上げた。薄明るいネットカフェのライトがぼんやり光っている。いよいよ、大林を本格的に吊るす方法が柴崎の脳裏に浮かんできていた。彼はゆっくり目を閉じ、しばしの休息をとった。
数日後、柴崎はいつものように大林の研究室前の廊下を清掃していた。一つだけ違っていたのは顔に一枚の絆創膏を貼っていたことだ。
「おはようございます」
廊下の先から声が聞こえた。大林だ。柴崎は深く被った帽子のつばを握って軽く会釈した。大林が研究室に入ると同時に柴崎は声をかけた。
「先生、研究室の中を簡単に掃除しましょうか?」
「あっ、ああっ、そうだね。たまにはお願いするかな。かなり汚いけど床くらい掃いていただこうか」怪しむ様子もなく答えた。
「では、失礼します」
柴崎は堂々と大林の研究室に入り清掃を始めた。
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