「あっ!先生、す、すみません」
と言うやいなや、びびった様子で肩をすくめながらすばやくカードを拾い上げた。
突然のことにキョトンとしている大林にカードを手渡そうと差し出した。しかし、次の瞬間、カードは再び足元のバケツの中に舞い落ちた。
「あ、あっ、先生、ほんとに、ほんとにすみません。大切なカードが…」
そう言うと、水面に浮かんだカードをバケツから取り出した。
「すぐに拭きますから、許してください」
大林が話しかける間も与えず、柴崎はカードを持ったまま研究室を飛び出した。そして、廊下においてあった清掃袋からスキマーを取り出し、すばやくカードを通して情報を盗み取った。いわゆるスキミングである。
数分もしないうちに柴崎は、白い綺麗なタオルにカードを包みながら研究室に戻った。
「先生、本当にすみませんでした。綺麗に拭きましたので許してください」深々と頭を下げながらカードを丁寧に手渡した。
「いえいえ、いいですよ。急にぶつかってびっくりしましたがね。カードのことは気にしていませんよ」
どうぞ、清掃を続けてください、そう言っているかのように、右手で床を指しながら物腰の柔らかい、いかにも普段の彼らしい紳士的な物言いで大林は受け答えをした。
「すいみません、本当に気をつけますので」
そう言いながら、二度とこんなことはないんだけどね…と柴崎は心の中でつぶやきながら清掃を続けた。
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