時計は13時を回り、あと数分でゼミが始まる。エレベーターから一人の女性が静かに大林の研究室に向かってきた。間違いない!柴崎はその女性を見て直感的にそう感じた。
その女性はうつむきながら重い足取りでゆっくりと歩いてくる。美しいはずの黒く長い髪の毛、色白できれいな肌をしたその女は完全に生気を失っていた。何か心に重たいものを抱え込んでいる様子を隠しきれないでいた。
彼女はうつむいたまま、そうっとゼミ室の戸を開けゆっくりと入っていった。
「おい、永澤!おせえよ」
「そうよ、里美もう少し早く来なさいよ!」
ゼミ仲間の声が中から響いてきた。
永澤里美…柴崎は眼鏡の中央を中指で押し上げ、ふぅっと一息すると清掃の仕事を続けた。
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