2008年01月09日

恥づる 16:永澤里美

次の日の午後、柴崎は研究室前の廊下を黙々と清掃していた。時間は12時50分。もうすぐ大林の研究室でゼミが始まる。数人の学生たちが慌しく研究室に向かって走ってきた。男子学生が3人、女子学生が2人。この5人の中に「hitorishizuka」なる女子学生はいるのだろうか…柴崎の勘ではNoだった。なぜなら、彼女は大林のあるいやがらせに声を大にして言うことができず悩んでいるからだ。悩みを抱えているのであれば、おそらくこのゼミには一番最後にやってくるのではないか、そう柴崎は睨んでいた。
時計は13時を回り、あと数分でゼミが始まる。エレベーターから一人の女性が静かに大林の研究室に向かってきた。間違いない!柴崎はその女性を見て直感的にそう感じた。
その女性はうつむきながら重い足取りでゆっくりと歩いてくる。美しいはずの黒く長い髪の毛、色白できれいな肌をしたその女は完全に生気を失っていた。何か心に重たいものを抱え込んでいる様子を隠しきれないでいた。
彼女はうつむいたまま、そうっとゼミ室の戸を開けゆっくりと入っていった。
「おい、永澤!おせえよ」
「そうよ、里美もう少し早く来なさいよ!」
ゼミ仲間の声が中から響いてきた。
永澤里美…柴崎は眼鏡の中央を中指で押し上げ、ふぅっと一息すると清掃の仕事を続けた。
タグ:ゼミ
posted by 志波純一 at 00:33| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (16) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする