カタカタカタ、いつものように静かで一箇所から灯りの差し込む部屋にはキーボードを打ち込む音だけが鳴り響いていた。遠くの方ではビリヤードに楽しく興じる若者たちの声が聞こえる。そんな楽しげな雰囲気とは対照的に柴崎は無表情にインターネットを開いている。
「パスワードは…?」「フォルダセキュリティーもかかっているな…」
ぶつぶつと呟きながら慣れた手つきでキーを叩き、彼は京帝大学事務局が管理している学生の個人情報のフォルダに入り込んでいた。彼にとってはハッキングなどお手のものなのだ。これだけの技術を持ちながら、なぜ彼はネットカフェに住み着いているのだろうか…見ている者がいればそう思わせるほど鮮やかな手さばきで「永澤里美」の情報を入手した。
「なかなか優秀な娘なんだな。過去二年は優ばかりだ。今年から三年生になり大林のゼミに入って専門性を磨いている、というわけか…?」
履歴に貼られている彼女の写真は、昼間会った女性とはまるで別人のような明るく爽やかな笑顔を見せていた。
「次は大林のパソコンだな…」
柴崎の目が獲物を捕らえる豹のようにより一層鋭い輝きを放ち始めた。
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