2008年02月22日

恥づる 32:小型カメラ

この日,柴崎は清掃の仕事をすばやく終え,自身のネットカフェの個室に閉じこもった。パソコンを立ち上げ,カタカタとすばやくキーボードを操作した。モニター上に見られるデジタル時計は午後の5時半を表示している。この時間帯になると大林は研究室にいることが多い。研究生も今の時期は早く帰ってしまう。そのことは清掃の仕事をしながら観察していた。
「よし,つながった」
大林は眼鏡の中央を中指で押し上げながら,モニターに映し出された映像に目をやった。研究室に仕掛けた小型カメラが個室の前の状況を鮮明に伝えてきている。彼は大林の恥ずべき行為を吊るすため,ここ数日の間に仕事の合間を縫って様々な作業に取り組んでいた。大学の屋上にはカメラの電波を飛ばすためのアンテナを設置したり,校内には中継するための機器を設置したりした。清掃員として作業していたので学生や教員にもとりわけ怪しまれずに済んだ。
しかし,主任の芦澤には,作業の最中に時々指定された場所を離れていることを確認され,どこかで勝手に休憩しているのかと怒られたりもした。柴崎はモニターを見ながら,ふと,そのことを思い出し,クスッと一人笑いをした。
その時だ。大林が研究室に入ってきた映像が目の前に飛び込んできた。彼は周辺の資料をゴソゴソと探り,自身の研究に必要なものを探していた。山のように積まれた資料が一度机から山ごと落ちた。大林は慌てて資料を拾っている。
柴崎は,先ほどの一人笑いとは別の冷やかしのような含み笑いをしながら,その状況を眺めていた。大林は資料をもとに戻すと,必要な資料を手にして個室に入ろうとカードキーを自分の財布から抜き出した。カタカタカタ,柴崎がキーを叩くと同時にその瞬間の映像が拡大され,モニターに大きく映し出された。
タグ:カメラ 映像
posted by 志波純一 at 09:42| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (32) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする