2008年03月07日

恥づる 37:封筒

CDなのか、DVDなのか、柴崎はデータが保存されているメディアを探した。多くの書物がある中から朝の短い時間の中で探し出すのはかなり危険が伴う。急がなければ…あせりとは裏腹に書物の間からは何も見つからない。なぜだ、画像が保管されているメディアをここに隠しているんじゃないのか、叫びたくなるそんな気持ちを落ち着かせながら一冊一冊、本の間を探した。検討違いだったのか、そうあきらめかけた時、一冊の本が書棚からはみ出ているのに気づいた。柴崎は何かの匂いを嗅ぎ取ったかのように、その一冊に手を伸ばした。本の間には茶色い封筒が一つ挟んであった。封筒は膨らんでおり、柴崎には中を見る前にその中身が容易に想像できた。ゆっくりと封筒を開けると案の定、札束が入っていた。ざっと数えて百万ほどだろうか。札束をつまんで取り出すと、一枚の紙切れが封筒の口からひらりと舞い落ちた。
その紙を拾い上げると、紙面に目をやると次のような短いメッセージが書かれていた。
「いつもありがとう。また、頼む」
なんだ、この金は誰かから受け取ったものなのか、そう思いながらメモ書きの下のほうに目を落とすと、「T・S」とイニシャルが記されていた。
T・S…T・S…誰だ?T・S…
「あっ!ま、まさか…」
柴崎は思わず声を上げた、と同時に、何かに気づいたのか…急いで自分の侵入してきた形跡を隠し、大林の研究室から足早に立ち去った。
タグ:封筒
posted by 志波純一 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | hanged1 恥づる (37) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする